KojimaDaigo BLOG

日常絵話 NichijoKaiwa

絵の上手な子供

 私は小さい頃から絵(線画)が上手だったらしく、だから小学生の時はマンガ読むのが好きだったからマンガ家になりたかった。テレビの刑事ドラマみて「おれ刑事になる」、ピンクレディーが好きで「歌手になりたい」とみんなが言っている時期でよくある話だ。

 だから中学に入ってまもなくタイガーマスクが颯爽とデビューし長州力が暴れ始めてプロレスブームが到来した時には、マンガ家の夢は何の執着もなくあっさり捨ててプロレスラーになりたいとぼんやり思っていたものだった。

 そのマンガ好きの小学生はマンガ上手であり、似顔絵上手のプロレス好き中学生となり、デッサン上手の高校柔道部員になった。

 ところが、いわゆる純粋美術となると、まるで関心の無い単なるニキビ少年だった。まったく関心無いから執着も熱意も無い。あるのはニキビだけだった。

 学校の行事なんかで何か絵を描く必要があるという時、校内での私の評判を知ってか、クラスのほとんど全員が、毎度決まって一斉にオレを見た。

 小・中・高の12年間ずっとそうだった。いや、今なおそうなんだけど、中学以降に関しては、美術の授業でみんなの前でどんなに褒められても、絵や美術が「好き」だなんて自分の口からほとんど一度も言ったこともなく美術に対する憧れや志など微塵も無かったのに、ただ上手いというだけで、よく作文集の表紙や、文化祭の何かのポスターとか運動会の看板描きみたいなのにかり出された。実際周りの人にはウケも良かった。

 中には私のことをまだ知らない子もいて、目の前で突然すらすらと完成度の高い(とくに立体的な)ものを素早く描くと、驚きと奇異の目で見るのだった。少し興奮しながら「どうして上手いの?」とよく質問されたが自分でもよく分からない。習ったわけではないし、中学・高校の頃は絵がとくに好きなわけでもないので説明出来ない。「でもすごーい上手!」と言われると照れくさくてかえって恥ずかしい気分。

 そうして学校行事などででかり出されて「面倒なことを引き受けてしまった」と思う一方、どうして周囲の人々は文字は書けるのに自分の様に絵が描けないのか、なぜ「絵は苦手」と決まり文句のように言うのかが不思議でよく分からない、などと感じていた。そして面倒とはいいながらも、頭の中でこう描こうと思い着き(着想)さえすればすぐに没頭出来てしまうのだった。

中学の卒業式の帰り道で、普段は会って話しなどしないいつも学年成績トップの優秀で有名な子から「いつも君の事を尊敬していたんだ。勉強ができるより絵が描ける方がよっぽどいいよ。」と突然「告白」されてとても驚いた。

小学校の時よく遊んだ友達が中学でギンギラの大不良に変貌していて校内で俺を見つけた時に「こいつは絵が凄く上手いんだ、スゲーんだ」と取り巻きの連中にガラガラ声で自慢していた事もあった。言ったあと彼は「オイッ!」と怒鳴りながらピースサインを出すと真後ろにいた茶色い髪の同級生が銀色のケースからタバコを一本取り出しピースサインの指の間に差し入れ、それを口にくわえるとすかさずさらにもう一人の付き人がライターで火をつけたりしていた。その威圧感充分の取り巻きの人々も私のことをしげしげと眺めていた。

 高校では美術の授業をさぼってばかりいたにも関わらず、美術の教師から「君なら◯◯芸大に推薦してあげられるよ」と言われ、何を言っているのか理解出来ずに好意あるありがたい話をあっけなく断ってしまったことさえある。

 高校の同じクラスに美大進学を希望する女子生徒がいて、目の前で「へー、おまえが?」と言ったら後で泣いていたらしい。深く傷ついてしまったのは、どうやら私が校内でも最有力の「評判の腕」にもかかわらず絵や美術に全く理解が無いという点が、気分で滲み出たんだと思う。 あとで同窓会か何かで本人から聞かされて申し訳ないことをしたと深く反省した。自覚というものがまるでなかったのだ。

 絵が上手なのに当事者はそういうことに興味ないという少年だったが、大人になってお金を稼ぐのはこれなのだろうな、というのはぼんやり漠然と気づいてはいた。

 そこで一度、絵と直接しっかりと正面から関わってみようと思ったのが21歳の時だった。

 なぜか「腕に覚え」があり、「きっと何か出来るだろう」と闇雲に行動に移した。 こうやって活字で書くと現実はさておき、何やら若者らしい積極的な態度だが、いかんせん「熱意」に大幅に欠けている。 何となくほかに大した特技もないので「絵の仕事につこう」という程度の話で、明確に目指すものがあって情熱的に走り出していく、というものでもなかった。第一目指すものって無かった。(つづく)

小島大吾 ロードアート事務局

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